『原初の叫びを上げるもの』「あとがき」補記その1:Teenage Time Killers

『原初の叫びを上げるもの』(以降「本書」と略)を出版して1か月が経ったが、紙幅の都合や、まあこんなことはわざわざ言及しなくてもいいか、というような、「あとがき」には書かなかった細かいことがいくつかあるので、順に書いていきたい。


Teenage Time Killersというロック/パンクのスーパーグループがいる。Corrosion of Conformityのドラムのリード・マリンと、My Ruinというバンドのメンバーによって始められたプロジェクトのようだが、参加したメンバーがなかなかすごい。泣く子も黙るデイヴ・グロール、Sunn O))) のグレッグ・アンダーソン、Queens of the Stone Ageのニック・オリヴェリ、COCのマイク・ディーン、またボーカルは曲ごとに異なるようで、SlipknotやLamb of Godといったメジャーなバンドのボーカルから、ジェロ・ビアフラ、 Articles of Faithのヴィック・ボンディ、Scream、Fearといった大御所パンク・バンドのボーカルや、Prong、BL’AST!、Municipal Wasteのボーカルなども参加している。2015年にアルバムを1枚出しただけだが、当時は話題になったようだ。私はこのバンドのことをまったく知らず、本書の翻訳作業中に知ることとなった。

昔デイヴ・グロールが企画したProbotというヘヴィロック、ヘヴィメタルのオールスター・プロジェクトがあったが、このバンドはほとんどそのパンク版のようでもある。バンド名からもわかるように、「十代の暇つぶし」的な、童心に返ってルーツのパンクをやってみよう、というプロジェクトなのだろうが、もちろんこのバンド名は、Rudimentary Peniの最初の音源である7インチEPの曲から取られている。B面の1曲目の、あのピロピロしたギターの単音リフから始まる曲だ。日本語でググってみると、ロッキング・オンのようなメジャーなメディアにも取り上げられたプロジェクトだが、そういった記事では、当然そのバンド名がRudimentary Peniから来ているということには触れられていない。せいぜいジェロ・ビアフラの名があるくらいだ。

とまあ、こんなロックスター&パンクの有名人が集まったプロジェクトの名前が、Rudimentary Peniの曲名から取られるくらいに、Rudimentary Peniは西洋パンク社会では名の通ったバンドだ、ということがわかるのだが、実際にこの曲の歌詞を読んでみると、やはりこれぞRudimentary Peniという暗さがあり、このスター軍団のお楽しみとはやや距離があるように思える。

Teenage Time Killer

十代の暇つぶし
年をとれば若返りたいと願う
十代の暇つぶし
ジェームス・ディーンの頭蓋骨が十代の夢につきまとう
十代の暇つぶし
嘔吐の青春、安楽死

本書を読んだ方なら覚えているかもしれないが、頭蓋骨は本書によく登場するモチーフだ。最後の「安楽死」は、その前の「嘔吐の青春」(Youth of nausea)と音がかけられた「Youthanasia」(= euthanasia、安楽死)という造語だが、やはりここでも死のイメージが取り憑いているのは、本書のナットのことを知れば納得だ。同時期のロンドンに、こちらはバンド名をその“euthanasia”とかけた、Youth In Asiaという女性ボーカルのアナーコ・パンクのバンドもいたが(のちにDecadent Fewになるバンド)、当時安楽死はパンクスも気にするような大きなトピックだったのだろうか。

アメリカ合衆国で安楽死協会の「ヘムロック協会」(ヘムロック、hemlockはソクラテスの死刑に使われたというドクニンジンのこと)が創設されたのが1980年らしいので、もしかしたらその影響があったのかもしれない。イギリスでは昨年、安楽死法案が下院を通過したようだが、上院で修正案が出て成立とはならなかったようだ。パンクスは安楽死をどう思っているのだろうか、と疑問に思う人もいるかもしれないが、死刑同様、国家による人殺しを合法化する安楽死には当然反対する、というのが基本姿勢だろう。「ハードコア・パンクの歌詞を読む」に掲載のInstinct of Survivalの記事で黒杉氏が少し触れていたので、こちらも改めて読んでみてほしい。

(2026/5/6)

『原初の叫びを上げるもの』の購入はこちらから