久々にヨーロッパに行ってきました

5月末で『原初の叫びを上げるもの』の印刷代がなんとかペイできたので(言っとくけど印刷代だけですよ)、これが最後の機会になるだろうという恨めしい思いとともに、14年ぶりにヨーロッパに行くことにした。春先から何となく考えてはいたのだが、円安はおそらくこのままジリジリと際限なく進行するであろうし、それにプラスしてコロナだウクライナとロシアの戦争だアメリカとイスラエルがイランに対して宣戦布告だと、ヨーロッパのインフレもどう考えても止まらないようなので、行くならもうこのタイミングしかない、と思ってのことである。ちなみにこの旅で、いつもは手を付けずにちゃんと貯めていた自転車操業の印刷代(先述のアガリ)をほとんど使ってしまったので、次の翻訳出版はもうほぼ諦めている。『原初の』が売れ残ったら廃業、ということはこれまで書いた通りで、まあ仕方がない(Debacle Pathはあと2冊くらいは出したいところだが)。

今回行きたいところは2ヶ所あった。1つはDebacle Path vol.1, 2に記事を書いてもらった、イタリア・トリノのスクワット。もう1つは、イギリス在住の旧友マルタがブリストル近郊でやっている、Rockaway ParkというDIYスペース。前者については、私はこれまでイタリアには行ったことがなかったというのと、その記事を書いてくれたしろー君に、遊びに来てと前から誘われてもいたので、まあ書いてもらってるだけで自分の目で見ないのもよくないなと思ったこともあり、ようやく行ったのだった。後者は日本ではあまり知られていないかもしれないが、マルタがUKアナーコ・パンク伝説・The Mobのマーク・ウィルソンと10年くらい前に始めた何とも不思議な場所で、晩年のDIYパンク生活の参考になるのではと思いながら、いつもインスタを見ていた。イギリスはもう北欧並みの物価なので恐怖し逡巡していたが、先に書いたようにこれが最後だろうと、思い切って行くことにした。

結論から言うと、どちらも今行っておいてよかった。ほぼすべての「政府」が右に寄っていき、それに対抗するはずの左派勢力も自縄自縛に陥っているような現状においては、スクワットは減ることはあってももう増えることはなさそうだし、Rockawayでの1泊は、パンク・ライフは老いたら何ができるのか、という課題を(ようやく)まじめに考えるきっかけになったと思う。
帰りにベルリン、そしてはじめてのブダペストにも寄ったが、この2ヶ所は熱波にぶち当たった先2国のせいか、体調が悪くてあまり楽しめなかったが、それでもブダペストでは非常に面白い出会いもあり、ハードコア・パンクに限らず音楽表現のことをいろいろ考えることになった。
旅はタイミングである。詳しいことはDebacle Path次号にまとめるつもりなので、このウェブサイトにはブログにその他の細かいことを書いていくつもりです。
(写真は少しだけインスタに上げてあるので、そちらをご覧下さい。)

Rockaway Park

MEZCAL NON SI TOCCA(メツカルに手を出すな)

先月に数日お世話になったイタリア・トリノのスクワット、Mezcal Squatが強制排除の危機にさらされています。
以下メツカルによる声明文です。

これは後日改めて書こうと思っていた内容とも重複しますが、スクワット、自主管理スペースに対しては年々弾圧の勢いが増しており、かつてのように、「やられたらやり返せ」が機能しなくなり、その数は年々減っているとのことです。
メツカルの素晴らしさは改めて書くとして、今はこの20周年の節目を迎えるスクワットが今後どうなるのか、注目したいと思います(それでもスクワッターたちは、8月には20周年記念のイベントで祝うつもりなのが頼もしいですが)。


占拠20周年記念まであと一月という時期に、これは過去にも試みられたことですが、私たちの住む第21病棟に対し「安全対策」のための工事(=強制排除)が実施されるというニュースが飛び込んできました。

第21病棟は、1910年に、コッレーニョ精神病院の犯罪者収容棟として建設され、80年代後半に閉鎖・放棄されました。そして2006年に、トリノの空き家占拠運動の中で結成された若者のグループにより占拠され現在に至ります。

20年前、第21病棟内部に入った人々は、使用済みの注射器、血溜まり、人糞など、社会の周縁で生きる人々のゴミ捨て場のような光景を発見しました。バザーリア法※実施以降も長く、病棟の中の苦しみは消え去っていなかったのです。廃棄物を掃除するための労力は並大抵のものではありませんでしたが、今日では Mezcal内部に、楽器を演奏できるスタジオや、ジム、鉄工・木工作業所、シルクスクリーン印刷所などの設備が整備され、地域社会に開放されています。

「占拠」とは、誰も利用していない場所を開き、政治的な活動や、金銭的な利益に左右されない社会的活動を自分たちで創造する試みです。

Mezcal での活動はすべて、入場料や参加費などのお金を取ることなく、自主運営されています。この運営方式は(トリノでは皮肉をこめて「Bella Vita(美しい人生)」と呼ばれています)、権力関係を抜きに、経験や知識を分かち合い、集団での計画の実現や、問題解決のための技術を習得することを理念としています。

トリノそしてピエモンテ州には、占拠・自主自治管理された社会的スペースの長い歴史があります。80年代から今日に至るまで、様々な政党・政治的立場の行政当局者がいましたが、彼らは一貫して占拠されたスペースを「衛生・安全・公序良俗の緊急事態だ」として非難してきました。これは彼らが直接責任を負うべきである、真の緊急事態から人々の目をそらし、それに対処しない口実です。Mezcalのケースにおいては、2025年からジョヴァンニ・ラ・ヴァッレが舵を取るASL TO3もこのごまかしの共犯者となっています。

この局長の履歴書は長く、一言で要約するのが困難な程ですが、2016年から現在に至るまで、医療機関内部の人事などにおいて様々な不審な動きをしています。
2018年から2025年まで、彼がトリノ大学病院企業の〈健康科学都市トリノ〉の責任者であった期間の業績は特に際立っています。同医療拠点の経営破綻の一因となった衝撃的な粉飾決済をめぐる裁判では、彼は被告の一人になったほどです。 まだ彼が退任して一年ほどですが、管轄のモリネッティ病院の脳外科病棟の天井は崩壊し、入院患者の待機リストは際限なく長くなっています。
どうしてそのような人物が、ピエモンテ州で最大規模の医療拠点、そしてその後、同州最大の地方保健局(ASL)のトップに就くことができたのでしょうか?
ラ・ヴァッレの経歴で際立っているもう一つの活動は、政治界との付き合いです。まずは、〈イタリア民主党〉(PD)のサルヴァトーレ・ガッロ――この人物はTAV(高速鉄道)建設および医療分野における横領と汚職で有罪判決を受けている――とのすてきな夕食会。〈同盟〉(Lega。旧北部同盟Lega Nord。排外主義右派の前政権与党)のファブリツィオ・リッカのイベントにはだいたいいつも登場する。最近では、元学生ファシスト集団〈FUAN〉のメンバーで〈イタリアの同胞〉(Fdl)に所属し、ファシストの占拠スペースの活動家だった人物、アルベルト・ロメオとともにメローニ派としても活動しています。
この州の医療および生活に必須のインフラの現状を踏まえると、私たちが期待できる唯一の確実な「安全対策」とは、彼ら「衛生・安全・公序良俗の専門家」たちがいますぐに離職することです。

トリノやその周辺で行われてきた空き家占拠(居住目的のものも、政治的な目的ものも含む)の長い歴史の中で、元占拠スペースだった場所が、強制排除後になんらかの施設として利用されている例はわずかしかないことも指摘する必要があります。「建物の安全対策」というすばらしい名前の元に行われる工事の後には、再び立入禁止、使用不可の建物が放置されるという悲しい現実があると、私達は長年の経験からよく知っています。第21病棟はかつて廃墟となっていた建物であり、現在も具体的な利用計画や投資の見通しが立たないため、再び廃墟に戻ってしまう恐れがあります。

2019年から今日に至るまで、トリノとその周辺では、10ヶ所以上の社会的活動を行っていたスペースが強制排除されました。行政内の高い地位についている無能な少数者たちが、自らの存在意義を維持するために必死になっているのです。強制排除を行うことで、「なにかやっている感じ」をだそうとしていますが、実際には巨額の費用・公的資源を浪費しているだけです。戦争や気候変動によって荒廃し、孤独と社会的分断などにより死にかけている社会において、真の緊急事態は占拠されたスペースなどでないのは明らかです。
自主管理スペースは、利益に左右されない、連帯と包摂に満ちた社会性を「今、ここに」提案しています、国家や資本家が私たちに押し付けようとする災厄に対する解毒剤であり続け、これからもそうあり続けるでしょう。
ただ生き延びるのではなく、真に生きるために。
みなさん、準備はできましたか。
8月5日、6日、7日、8日、そしてこの夏の間中。

Mezcal occupato, Luglio 2026

※バザーリア法:1978年に制定されたイタリアの精神医療に関する法律。脱施設化、精神科病院の廃絶を訴えたフランコ・バザーリア医師の名にちなむ。以降医師や警察が機械的に独断で患者を閉鎖施設に送ることはできなくなり、段階的に精神科病院は廃止される。現在 Mezcal と呼ばれる建物が放棄されたのも同法の影響による。なお放棄・放置されたあとも、帰るところのない人や、家のない人などが入れ替わり第21病棟で生活していたため、2006年占拠時にスクウォッターは彼らの廃棄物を発見することになる。

イタリア語:

MEZCAL NON SI TOCCA

【発売】原初の叫びを上げるもの

Rudimentary Peniのニック・ブリンコによる半自伝的サイキック・アナーコ・パンク・ホラー小説、『原初の叫びを上げるもの』、無事刷り上がりました。

発売は3月27日(金)です。いつも当レーベルの刊行物を販売してくれている下記レコード店、書店や、ネット書店等でご購入いただけます。
またお近くの書店でも、書名やISBNをお伝えいただければお取り寄せ可能です。
取り扱い店一覧

当サイトでご予約の方には順に発送していきますので、しばらくお待ち下さい。
一緒に予約を受け付けた、Tシャツ、小冊子「Debacle Path Paper 02/猟奇の異常なアナーコ・パンク また私は如何にしてRudimentary PeniおよびThe Primal Screamerと出会ったか」(長い…)、ステッカー等も順に発送していきます。
引き続き、ご注文はこちら

書店、小売店へは、取次(八木書店)経由で納入可能です。
ご注文、詳細は書店の方へをご覧ください。

ニック・ブリンコ ポスター・コレクション販売!

イギリスのDIYパンク出版レーベルAmorphous Piecesが販売しているニック・ブリンコのポスター40種類を、『原初の叫びを上げるもの』日本語版出版に合わせて、Gray Window Pressでも販売することになりました。
4種類を1セットとして、計10セット販売します(バラ売りはしません、悪しからず)。ただ円安&イギリスからの送料が高かったので、とりあえず各10セットずつになります。
価格は1セット4枚、3400円+送料450円(普通郵便)になります。

ブリンコのイラストについては、『原初の叫びを上げるもの』の中でも本人が非常に的確な自己洞察を行っているので、本と合わせて見ていただくのがいいかと思います。
ポスターは実際のイラストに近いA3サイズ(1つだけA3より少し大きめ)で、過去に出版されたニック・ブリンコのイラスト集に入っているものもありますが、これまで一度も見たことがないものもあります。過去に“Death Church”のポスタースリーブや、“Pope Adrian 37th Psychristiatric”のインナーのLPサイズのイラストはありましたが、このサイズでニック・ブリンコのイラストを見るのは私もはじめてで、受け取って少し眺めただけですが、やはりその描き込み具合、モチーフの異様さに圧倒されました。
本と一緒にご購入下さい!と言いたいところですが、ポスターはポスター用の段ボールでお送りしますので、ご購入の際は別々にご注文下さい。

オンライン・ショップ

(2026/3/15更新済)

【3/27発売】原初の叫びを上げるもの/ニック・ブリンコ

2024年発売のDebacle Path 別冊2で告知していましたが、Rudimentary Peniのギター・ボーカル、ニック・ブリンコによる1995年発表の小説、ついに日本語で発売です。

原初の叫びを上げるもの
ニック・ブリンコ 著・イラスト

2026年3月27日発売


予約はこちら

訳者あとがきで、アナーコ・パンクとRudimentary Peniの歴史を紹介しています。

いつも当レーベルの商品を取り扱っていただいているレコード店や書店、通販サイトなどでも購入可能。
Gray Window Press直販はポストカード付きです。予約受付中。

また本書刊行に合わせて、私鈴木が『原初の叫びを上げるもの』を出版するまでの経緯などを綴ったミニジン、「Debacle Path Paper 02/猟奇の異常なアナーコ・パンク また私は如何にしてRudimentary PeniおよびThe Primal Screamerと出会ったか」も発売します。A6サイズ、8ページ(約6,000字)。こちらも予約受付中!
Tシャツ、トートバッグ、ステッカーも予約受付中!
Tシャツ(送料無料!)、トートバッグは3/2(月)までの予約受け付けとなります。

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