Debacle Path vol.2
4月25日発行予定
詳細はこちら
Debacle Path vol.2 is published on April 25.
Contents
These books were discussed at Gray Window Press last year!
Gray Window Pressの二人の間で昨年話題になった本を挙げておきます。
(日本語の本は英語の本の下にあります)
By A.K. Acosta:
以下は鈴木による日本語の本:
今年2019年はGray Window Pressを始めて最初の年でしたが、雑誌(ジンではなく雑誌と呼ぶことにします、バーコードもついてるし、ジンみたいな「気軽さ」がなさそうなので)Debacle Path vol.1と、MDCのヴォーカル、デイヴ・ディクターの自伝『MDC あるアメリカン・ハードコア・パンク史 ―ぶっ壊れた文明の回想録』を出版することができました。ご購入いただいた方、寄稿者やその他諸々ご協力いただいた方々、ありがとうございました。
来年は(多分)2月ごろにDebacle Path vol.2を、そのあとに(予定通りいけば)2冊、海外のパンクスによる本の訳書を出版する予定です。引き続きご注目いただければありがたいです。
2019 was the first year for Gray Window Press and this year, we published the first issue of Debacle Path magazine and the Japanese version of MDC Dave Dictor’s “MDC: Memoir from a Damaged Civilization: Stories of Punk, Fear, and Redemption (Manic D Press).”
We are going to publish the second issue of Debacle Path in probably February which features a few interviews of American punks who went into academic fields. And we are also planning to translate and publish two more books next year (hopefully).
※Debacle Pathは不定期刊なので、その間に書き溜まったような、いつ日の目をみるかもわからない記事は、このサイト上に投稿していきます。
映画『グッド・ヴァイブレーションズ』から想起するベルファストのアナーコ・パンク
鈴木 智士(Gray Window Press)
今夏、2012年のイギリス/アイルランド映画、『グッド・ヴァイブレーションズ』が公開された。私はこの映画のことをまったく知らなくて、当レーベルの書籍の販売でもお世話になっている高円寺のRecorshop Baseの飯島さんに教えてもらい、最初のシネマカリテでの上映は案の定気付いたらあっという間に終わっていたので、先日渋谷HUMAXでようやく観てきた。
映画自体は、北アイルランド紛争のさなかに、「無謀にも」レコード店を始め、パンクと出会い、The UndertonesやRudiなど、ベルファストを中心に北アイルランドのパンク・バンドを世に送り出したテリー・フーリー(Terri Hooley)を主役に持ってきた、史実に基づく、言わば「パンクの歴史モノ」だ。北アイルランド紛争の背景などを知っておいた方が、物語の裏側で何が起きているのかよくわかるし、ロンドンとベルファストの物理的、精神的な距離感も頭の中に入れておくといいのかもしれない。そもそも初期パンクに興味がないと面白くないのかもしれないが、初期パンクにそんなに興味がないというか、そのあたりはバンド名くらいしか知らない程度のインチキな私でも(さすがに“Teenage Kicks”くらいは知ってたが)、まあそういった「名曲」が使われるシーンで気持ちが高ぶるようには作られている。あと警察をみんなで追い出すシーンとかも。ややテリー・フーリーをヒロイックに描きすぎている気もしないでもないが(実際にヒーロー的な扱いだったのかもしれないが)、ジョン・ピールってやっぱり偉大なんだなとか、オーディエンスの中に2000年くらいのパンクファッションみたいなのが見えたり、1980年あたりの話にCasualtiesのバックペイントをした革ジャンが出てきたりと、パンク・ファッションの歴史考証みたいな視点でも楽しめる映画だ。ただ日本語字幕がちょっと変で、パブリックドメイン映画などのワンコインDVDくらいでしかお目にかからないような、2名の話者のセリフを分けずに頭に「-」を付けて2行で表示する、という英語字幕によくあるような字幕表示が気になった。あれは日本語字幕だと見慣れないスタイルなので、何か気持ち悪かった。
と、映画の感想はこれくらいにしておいて、観終わってふと考えた、北アイルランド、ベルファストのアナーコ・パンクのことをここでは書いておこう。
映画の中でも語られていたが、1978年あたりだとロンドンではすでに「パンクは死んで」おり、しかも紛争地帯のバンドのことを、多少気にはしてもレコードをかけたり買ったりしてくれるレーベルはもういない。時代遅れの田舎者扱いだ。だからテリー・フーリーがレコードを持って営業に行ってもまったく受け入れられない。そしてどの組織や派閥にも属さず、「自分たちでやる」という、広義の“DIY”のパンクロックというだけで、ナチスキンズにテリー・フーリーがボコボコにされるシーンもある。
続きを読む →
【MDC あるアメリカン・ハードコア・パンク史 ―ぶっ壊れた文明の回想録】
Debacle Path vol.1に引き続き、「図書新聞」2019年8月10日号(3411号)掲載の、文芸評論家の岡和田晃氏の連載、「〈世界内戦〉下の文芸時評」第54回で本書を取り上げていただいています。(“Millions of Dead Cops”の名前の表記に誤植がありますが、岡和田氏曰く「千年王国主義の叛乱イメージ(さらに言えばノーマン・コーン対カウツキー的な)を本から受けてしまった」からかもしれない、とのことでした。この誤植はMDCの新しい名前として提案しておきます 笑)
「何度でも言うが、とりわけ日本の言説空間において、圧倒的に欠けているのはパンクの精神だ」と書かれた上で、本書を「文学」として読んでもらっています。
ちなみに時評のタイトルは「左派ポピュリズムとキェルケゴール的単独者の相克」。
図書新聞ウェブサイト http://www.toshoshimbun.com/books_newspaper/
あと著者デイヴ・ディクターのインタビューが、スケートボードのウェブマガジン、「VHSMAG」に掲載されています。
VOICE OF FREEDOM
伝説的USハードコアバンド、MDCのヴォーカルにして80’Sスケートロックシーンの生き証人でもあるデイブ・ディクター。FTC以前のSFスケートシーン、そして壊れかけた世界について大いに語る。
──DAVE DICTOR (MDC)
かなりのボリュームのインタビューで、先日の来日ツアーの時に行われたようで(最初はインタビューなんてムリなんじゃないかと思っていたのですが、結果的に1時間以上話を聞くことができたそうで、これは取材に関わられた方々の熱意ゆえに実現したんだと思います)、内容も、スケートとの関連から、本書のまとめ的なもの、その後のMDC、デイヴの動向(ブルガリアやマレーシア、インドネシアなどをツアーで訪れて思ったことなど)、そして彼の目から見た現代社会のことなども触れられており、ある意味でこの本以上に内容の濃いインタビューです。
デイヴが熱く語ったゆえなのか、主語が「オレ」だったりと、インタビュー訳文は本書とは違ってかなりマッチョな感じですが、それはそれとして、必読のインタビューですので、本は買わなくとも、こちらはまず読んでいただければ。パンクやハードコア、スケートに興味がなくても十分に楽しめるし、いろんな情報が詰まったインタビューです。写真はちょっと格好つけすぎですけどね(笑)。思わず、ロックスターかよ!と感じたのは内緒にしておきましょう。
An interview with Dave Dictor done by a skateboard-related web magazine VHSMAG is published.
VOICE OF FREEDOM
THE LEAD SINGER OF THE LEGENDARY AMERICAN PUNK BAND MDC AND THE LIVING PROOF OF THE 80’S SKATE ROCK SCENE, DAVE DICTOR. THE LEGEND TALKS ABOUT THE SKATE SCENE BEFORE FTC ERA AND THE PRESENT WORLD THAT’S ABOUT TO FALL APART.
──DAVE DICTOR (MDC) – ENGLISH
In this long interview which was done in the MDC/Naked Aggression tour in this June, he talks about not only about the relationship between MDC and the skateboard scene, but his point of view to the current world, what he felt in the tours MDC has done after he wrote the book in 2016 (check some stories he tells about Bulgaria, Malaysia and Indonesia). This is not like a cheap short predictable “Are you still political?” kind of interview. Check it out!